小菅 真千子
グラフィックデザイナー/空のアトリエ
Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。
—————— それからしばらくして彼の奥さんから手紙が来て、チャトウィンがイギリスに戻ったあと体調を崩しーすごくへんてこんりんな話なんだけど、中国奥地の遺跡のミイラだけから見つかったウィルスに感染して不治の病で倒れたと書いてあったー
[p66 14行目ー18行目]
Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。
手紙なのか本なのか、事実なのか物語なのか、今なのか過去なのか、色んなことがごちゃ混ぜになった瞬間です。
私はそのとき、つわりが始まって、久しぶりにゆっくり本を読めた時でした。
本は、本の中へ連れて行ってくれます。だから私は芹沢さんになって、歌舞伎町でチャトウィンとおしゃべりをしていたし、チャトウィンになって中国のミイラに近づいていたし、本だけど手紙を手にしていて、いずれもただの文字なのに、あー死んじゃった、うそー、これから赤ちゃんが生まれてくるはずなのに、私は本の中で一度死んだのです。
それが言葉の旅力ですね。
船のことが好きなのは、連れて行ってくれるから。
言葉のことが好きなのは、やはり連れて行ってくれるから。
どこに?
太陽が猛スピードで動いて、地球ごと宇宙を旅している様子をYoutubeで見ました。単細胞が人間になるまでに30億年。おなかの赤ちゃんは、それを300日でやってみせる。お母さんの1日は、胎児にとって1000万年相当。わたしの読書の旅は、赤ちゃんを何万年と旅させたことになるのかもしれません。
言葉のおかげで、少しずつ、宇宙の意思に近づいていっているようにも思います。
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