曽我 高明
現代美術製作所 ディレクター
Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。
—————— まず、ちょっとやってみることだ。そしてうまくいかなければ、引き返す。小さければ引き返せる。小さいものだけが引き返せる。こうした小さな試みが、社会の至る所で自生し、共生する世界を夢見る。そんな生き生きとした複雑な世界を求めて、わたしたちは船を出そう。
[p176 16行目 ー 19行目]
Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。
展覧会やアートプロジェクトの企画を考えていると、しばしば、進むべきか、引くべきか、悩むことがある。考えれば考えるほど解らなくなり煮詰まっていると、傍で見ていた妹が、よく僕にこう言った。「やってみたら?どうせ実験なんだから」。なるほど、それでかなり気が楽になった。
2016年に東京・墨田区の現代美術製作所を閉めるに際し、なんとなく忸怩たる気持ちを抱えていた頃、オルタナティブ・スペースを運営する知り合いからこう言われた。「やめられるって、素晴らしいですね。私たちも、いつかやめたって良いんだと思うと、励まされました」。僕より遥かに深く地域に関わっている人にそんな言葉をかけられ、むしろこちらの方が大いに励まされた。
で、僕は昨年から京都に住まいを移し、再びささやかなスペースを立ち上げた。考えれば考えるほど深刻な時代の船出になるけれど、今度も「実験」だと思えば、進むも良し、引くも良しだ。身軽さを武器に、試行錯誤して行くことにしよう。
「100の読者、100の経験」の詳細はこちら