100の読者、100の経験[046]


ニメイ

 

絵描き

2018年4月21日 カバンの背中のポケット
2018年4月21日 カバンの背中のポケット

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— ようするに「ある」と「なる」ということです、たとえば、この僕の身体はここに「ある」と見てもいいけれど、僕の身体に「なり」続けていると見てもいい。

[p58 912行目]

 

こうして形式(フォーム)を与えられた本書も、おそらく千年後には一冊も残っていないだろう。この本の本性がその形式との分かち難い関係性を維持するあいだは渡世を続け、さまざまな痕跡を刻む侠者となってくれているはずで、そのとき、ようやっとこの本のデザインは本懐を遂げる。〈尾中〉

p155 20ー23行目]

 

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

読み終わった時、この本はこの本になり続けるために生まれてきたんだと思いました。それから、宇宙船という乗り物が中身を運ぶと同時に中身も宇宙船を運んでいる感じがしました。船は操縦士で、燃料で、軌道そのもので、なんというかよくわからないけど「動いているということ」だ、と思ったのです。

 

わたしは乗り物に乗ったり歩いたり走ったりすることが好きです。自分が自分になり続けている、と一番感じるのはそういうふうに移動をしている時です。行くものと来るものが絶え間なく出会い続けることが、細胞のふるまいに重なるからかもしれません。そして自分が自分でもわからないぐらい色々なものの一部から生成されていることを思い出します。

 

たぶん、わたしたちはたまたま人の形をしているだけで、一瞬の点の集まりでできているただの軌道みたいなもので、この本に感じた「動いているということ」は、わたしたちのそれとほとんど変わらないかもしれないと思いました。



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