N.S
アートセンター主宰
Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。
—————— 読むことは、孤独な行為でありながら、そこでは「見えない他者との交換」が準備されていることがわかる。
[p169 10行目ー12行目]
Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。
私は大学のアーカイブセンターで働いています。そこでご一緒している日本文学の教授から、先日印象深い話を聞きました。
「かつて日本のお寺は学校であり図書館でもあり、その時代、僧侶は生き字引のような存在でした」と、ある書物に引用があります。それはこれまでの研究で明らかになっている書物からの言い回しとは微妙な差異があり、その原典はまた別に存在するのだろうと考えられてきました。しかし時代背景を鑑みると、紙が貴重であった当時、僧侶たちは読んだ書物の一文字一文字を書き写すでもなくひたすら暗記し、頭の中に大きな本棚を持っていたと考えることができるのではないか、というものです。
これを聞いたときに、懸命な読書がもたらしたものが遠くへ運ばれていく宇宙のような広がりを想像しました。その途方もない孤独な行為が、形を変えながら今に受け継がれています。紡いだ言葉を記し、残してゆくことには果てしない尊さがあります。
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