100の読者、100の経験[039]


遠藤 綾

 

Spiber株式会社/

やまのこ保育園 園長

2018年3月3日 鞄にいれて、車の中で飛行機の中で読んでいる
2018年3月3日 鞄にいれて、車の中で飛行機の中で読んでいる

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— 植物もただ食べられているわけではなく、アルカロイドの成分をどんどん変えていく。そうすると、オオカバマダラもそれに対応して変化を起こし、カバイチモンジもそれに続く。鳥も学習する。こうして、ある植物群ごとに多様化が進み、世界はますます複雑になっていく。このことは、「与えられた環境に適応した種だけが生き残る」といった単純な話ではありません。自分が変わることで環境が変わり、環境が変わることで自分も変わるというような、相互に進化していく「共進化」という考え方です。

[p36 1行目ー11行目]

 

よく「共生」って言われてそれはすごく重要だと思うけど、やっぱり勝手にしぶとく生きていくみたいな、「自生」も大事だなと思います。

[p105 11行目ー13行目]

 

本書の製作を通して、マネジメントの役割を振り返ってみるならば、それは「管理」することではなかった。目的も、目的地もなかったので管理のしようがなかった、と言ったほうが正確かもしれない。プロセス中心の世界観を提唱したエリッヒ・ヤンツにならえば、わたしたちのマネジメントは「触媒」に似ていた。不確定性や複雑さを減少させるのではなく、むしろ増大させること。新たな展開が生まれることを期待して、一つの創造的プロセス(ここでは一冊の本づくり)を刺激し、活性化させていくことに取り組む。そうした、プロセス開放系のマネジメント実験の場となったのではないだろうか。

[p158 14行目ー 22行目]

 

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

昨年、わたしは現場経験ほぼゼロのまま、保育園を立ち上げることになり、気がついたら園長になっていた。子どもの命を守り、家族の暮らしを支えながら、未来を生きていくための術を子どもたちに手渡すべく、試行錯誤の半年が過ぎた。

 

保育園をつくるためには、多くの書類を揃える必要がある。その中で最も難しかったのが、理念・目標・方針の策定であった。「なぜ、今この時代に保育・教育を行うのか」という問いに応えるために、わたしの思考回路をひらいてくれたのが「言葉の宇宙船」だった。

 

「共進化という生命観を基盤とする保育・教育の姿は」「共生と自生の両方を兼ね備えるためには」と本に書かれた言葉を水先案内人にしながら、次から次へと考えを巡らせ、一巡したらまた最初からページをめくった。読んでいると、頭の中のエンジンが徐々にかかって、言葉と言葉が星座を描くようにつながっていく。ヘビーユースにより、既にくたびれた様子のわたしの宇宙船。本棚に落ち着く日は、もう少し先になりそうだ。



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