100の読者、100の経験[030]


上地 里佳

 

 

2017年12月25日 昼休みに立ち寄ったパン屋にて
2017年12月25日 昼休みに立ち寄ったパン屋にて

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— 港|何でもキーワード検索ができる時代になって、予定調和になってしまうことにどこかで限界を感じているんだと思うんですよ。リーディンググループで取り上げた本が、すぐに何かにはつながらないかもしれなくても、もしかすると10年後20年後、たまたまそのときの二人が一緒に仕事をすることになったときに、片方がポンと投げた一言にピンときて、ものすごくいいものができるかもしれない。それは、本じゃないとできないことのように思います。 

 << 中略 >>

芹沢|言葉も書かれているけれど、やはり物質的な塊ですよね。そうすると当然、その本自体も年を取っていくし、自分の肉体がその物質と出会って、一緒に同じように年を取っていく。だから、ある言葉が合言葉として聞こえてくると、その本と出会い、歩んだ自分の人生が紐づいてきて、ただのキーワードを共有した以上の何かが生まれてくるんじゃないだろうか。

[p93 1-9行目、13-19行目 ]

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

何か疑問に思ったことは、ケータイに問いかければ答えが出てくるこの時代。もちろんそれは絶対的な答えではないけれど、すぐに検索ボックスに入力してしまうことで想像する機会は減ってきたのかなと思う。

 

少し前にはなるが、とある小さな読書会に参加した。一月に一回、一章ごとに読み進めていく構成のもので、参加者で同じ言葉を辿っていく。それぞれが引っかかる、腑に落ちるところが異なることを実感しつつ、感覚を交換しあう時間は私にとって新鮮な経験だった。

 

一冊の本を巡って話を重ねるなかで、その人の興味関心をずるずると引き出しながら、共同でものづくりをしているような感覚は忘れられない。本という物質を介して、共に創造する時間。それがこんなにも面白いものだなんて。 

 

『言葉の宇宙船』を読んでいて、その本に書かれた言葉の意味や存在は、他者によってより醸成されていくことにはっとする。今度ページをめくるときには、どんな感覚が生まれるだろうか。 

 

 



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