かねさか るみこ
Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。
*一文ではなく、一冊として
Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。
5月に東京で本が手渡されたあと、鄭州(中国)、大阪、金沢と旅をしながらあちこちでページをめくりました。6月にカナダの自宅に戻ってから、『言葉の宇宙船』のなかで語られた言葉が、こちらの日常のあちこちでなんの脈絡もなく私を掴まえて、気がつくとウサギの穴に落っこちたアリスみたいに、とんでもない時空間にすっ飛んでいるということが続いています。すっ飛ぶきっかけはもちろん本に出てきた言葉や一文なのですが、それらは時空を瞬時に移動する装置のようで、あらためて「言葉の宇宙船」という題は言い得て妙と感心しています。
本のあちこちに何気なく記されたキーワードやキーフレーズに触発されてすっ飛んだ先の、鮮明なテクスチャーを持つホログラフ的時空には、匂いや空気の流れや触感など、たくさんの感覚と感情が凝縮されていて、私は夢中になってしばらくあっちに行ったままになります。
「印象に残る一文」というのはちょっと困りました。どんな自分がいつどこで、『言葉の宇宙船』のどのページを開いたかで、誘発ボタンが変わるのです。そんな有機性は電子メディアでも経験できますが、原本の揺るぎのなさ、ネット上の一ページではなく、本という存在を介するということが安心して旅立って帰ってくることを可能にしているような気がしました。私がどうしても本に惹かれる理由のひとつは、旅立たせてくれつつもいつもそこで待っていてくれるからだと思います。
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