大澤 寅雄
文化生態観察
Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。
—————— 植物もただ食べられているわけではなく、アルカロイドの成分をどんどん変えていく。そうすると、オオカバマダラもそれに対応して変化を起こし、カバイチモンジもそれに続く。鳥も学習する。こうして、ある植物群ごとに多様化が進み、世界はますます複雑になっていく。このことは、「与えられた環境に適応した種だけが生き残る」といった単純な話ではありません。自分が変わることで環境が変わり、環境が変わることで自分も変わるというような、相互に進化していく「共進化」という考え方です。
[p36 1行目 — 10行目]
Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。
私は、文化政策やアートマネジメントの調査や研究を仕事にしています。アンケートやヒアリングをしたりして、現状を分析し、課題を抽出し、文化を支える仕組みを考えたり。そのような仕事をしながら、自然の生態系や生物の多様性をイメージしています。
この「共進化」について芹沢さんが説明している文章を読みながら、そうそう、こういうことが文化の生態系にも起きているんだよなあ、と深く頷きました。ただ文化政策では「適者生存」のような考え方に陥ることがたびたびあります。
文化や芸術を取り巻く財政支援やインフラ整備など「こういう環境に変われば、このように文化は変わる」と、直線的に、単純に考えてしまう。でも実際には、いろんなことが起きます。
環境の変化に適応する表現も、環境の変化から逃れる表現も生まれるし、表現が環境を変え、環境が変わることで表現も変わる。そのように世の中が変化する様子を観察したいと、つねづね思っています。
そういえば、本棚には途中までしか読んでない本がいっぱいある。よし。宇宙船を乗り継いで旅を続けよう。
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